

稼ぎと仕事
私たち日本人の祖先は、「稼ぎ」と「仕事」を非常にバランスよく心得ていました。
「稼ぐ」とは自分と家族が生活していくために必要な収入を得ることであり、「仕事」とは次の世代に文化や伝統、資産を引き継いでいくことです。
「稼ぎ」といえば、出稼ぎや稼ぎ頭などは、まさしく手元に現金収入を得る表現です。また、「仕事」といえば、野良仕事や山仕事などとよく表現されます。
しかし、野良仕事の大部分は、害虫の駆除や雑草の処理ですし、山仕事の大部分は、山林の余分な枝を掃ったり、芝刈りだったするのです。仕事とは、すなわち、直接的な収入を生むものではありませんが、それによって次の世代が同じように田畑で収穫を得たり、山が様々な種類の植物で覆われることで保水力や山の恵みを維持したりする再生産を支える機能を持ったものであったと考えられます。仕事とは、「安心して暮らせる環境を維持する保全の役割が主であった」とでも言い直すことが出来ると思います。もちろん、次を担う世代の子どもたちのことを考え・行動することもわれわれの仕事であるのです。
ワークライフバランスという言葉をよく耳にしますが、もっと根本的なところで考えるのであれば、我々は「稼ぎ」と「仕事」のバランスを問題にするべきではないでしょうか。
新しい問題
現在の私たちの状況を冷静に見ると、経済の仕組みが社会の諸関係を決定付けており、稼ぐこと・勝ち残ることに対して、異常に熱心な社会になっています。
そのためどういうことが起こっているのかといえば、今だに会社が擬似共同体としての役割を持ち、会社最優先の生活スタイルを送る人たちが非常に多いということです。会社の中で、人当たりがよく、仕事ができ、責任あるポストにどんどん登る人ほど、自分の子どもの成長してゆく姿を見ることなく、近所のお付き合いもやらず、日々を過ごしています。その結果、リタイアした後は、かつての同僚や取引先とたまに合って過ごすことはあっても、子や孫への接し方がわからなかったり、近所に仲間がいないため孤独に過ごすことなっている人が多いのではないでしょうか。そして、その悩みを相談したくても、その相手さえいないという状況に陥っている人も多いと思います。
また、同時に地縁的共同体の維持も困難を極めています。今や自分が生まれてから亡くなるまで同じ街(共同体)で過ごすという人は、今やほとんどいないのではないでしょうか。近い将来、好むと好まざるにかかわらず、町内会や商店会という組織がなくなる地域がどんどん増えてくるのと同時にお祭りや伝統行事が消えていくことになることを避けられなくなるでしょう。それは、日本人が日本人をやめてしまうことに他なりません。
21世紀型コミュニティーの形成
人は外から解決策をもたらされても、根本的な解決には至りません。内なるものから変化して、自らの手で解決してこそ意味があるのです。そして、人種や宗教、イデオロギーや時代を超えて本能的に感じることができるのが文化であり、アートであると思います。美味しいものを美味しいと感じ、美しいものを美しいと感じ、いい匂いをいい匂いと感じることは、人間が本能的に持っている機能であり、そこには人種や宗教、イデオロギーや時代は関係ないのです。
20世紀は残念ながら、化石資源に頼った経済活動に伴い、猛烈な宣伝・PRで新しい消費を創出することを繰り返しました。その結果、産まれた文化は消費を促進させるための商業主義的擬似文化であり、流行という名のもと、商品の覇権争いが繰り返されました。
21世紀に生きる我々は新しい形のコミュニティーを必要としながら、人間の根源的な部分を揺さぶる文化やアートを醸造することを通じて、お互いを理解し、同時に「わからない」部分の存在を尊重することで新しい自分を発見し、内なる変化を感じることが可能と考えます。
例えば、「時間」というテーマイベントを会社で行って、音楽でも彫刻でも絵でも食べ物でも、何でもいいから、自分で感じた「時間」を表現してみてください・・・というお題が出たとします。
すると、ある人が、トーストを目の前で焼くというパフォーマンスをやりました。
そして、「自分は、幼い頃から朝が弱くて、いつも母親に遅刻ギリギリの時間に起こされていました。それでもトーストくらいはきちんと食べていきなさいと言われたので、口にトーストをくわえて家を出ていました。時間という言葉を聞くと、私はそういう自分をいつも思い出すのです」という説明を聞いたとします
そこであなたは、自分は朝は弱くはなかったなあ・・・とか、朝は和食だったなあ・・・と、自分と比べて考えたり感じたりします。実は、そのことを通して、自分について再認識をする作業をしているのです。
やがて、イベントが進むに連れて、中には普段は全然違う部署で顔しかしらない人のパフォーマンスを見て、あるいは、よく知っている同僚でも、今までと違う部分を目の前で見せられて、気になるから話をしてみたい・・・ということで、今までなかった形での対話が生まれます。
そして、このようなことを通じて、それまで気がつかなかった自分を発見します。そうなるともう大変です。会社の中で組織の枠組みを超えてコミュニケーションが生まれ、そういう人が増えることで会社が変わります。
それがやがて社会を変える動きへと、ゆっくりではありますが、つながっていき、新しい人の結びつきが出来上がって、21世紀型のコミュニティーが生まれてくるのです。それは、建物でいう「筋交い」の」ようなものです。縦と横だけの枠では、建物はちょっとした力で崩れてしまいますが、「筋交い」が斜めに入ることで、丈夫になるのです。その「筋交い」のようなコミュニティーを作り、社会をよりよい方向に変えてゆく可能性を広げてゆくことが、HBJの目指すゴールです。
そして、そこには、政治的な解決や経済的な解決とは異なった、新しい形の解決方法の萌芽を感じることが出来るのです。
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Human Band...